四体液説

四体液説(よんたいえきせつ)は、古代ギリシアのヒポクラテスが人間の身体の構成要素として四種類の体液を挙げ、この体液のバランスによって健康状態などが決まるとする説。
人体が血液、粘液、黒胆汁、黄胆汁から成るとする説で、それらは古代の四大元素によって定義付けられ、かつ四季とも対応関係を持つとされた。

血液

  • 気質:血液質
  • 体液:血液
  • 季節:春
  • 四元素:空気

ガレノス派の理想像。人柄がよく、陽気でしかし無節制の傾向がある。痛風や下痢にかかりやすいので、ゴボウ、ゴマノハグサなど、冷・乾燥のハーブが用いられた。

黄胆汁

  • 気質:胆汁質
  • 体液:黄胆汁
  • 季節:夏
  • 四元素:火

胆汁質の人は熱・乾性なので怒りっぽく、肝臓病になりやすい。黄胆汁を減らすために、ルバーブ、スミレ、タンポポなど、冷・湿性のハーブが用いられた。

黒胆汁

  • 気質:黒胆汁質
  • 体液:黒胆汁
  • 季節:秋
  • 四元素:土

黒胆汁質の人は冷・乾性なので、便秘、うつ病になりやすく、過剰な黒胆汁を排出してバランスを回復するためにセンナ、ヘレボルス、などの熱性のハーブが用いられた。

粘液

  • 気質:粘液質
  • 体液:粘液
  • 季節:冬
  • 四元素:水

粘液質の人は、冷・湿の性質が有意であり、カタルや肺の病気にかかりやすい。バランスを回復させ、粘液を減らすために、タイム、ヒソップ、など熱・乾性のハーブが用いられた。

古代ギリシアの人々は、世界が、土・空気・火・水の4元素から成り立っていると考えた。これら4つの元素はそれぞれ4つの基本的物性、4つの体液、4つの気質に結び付けられ、人は誰でもトレカ一つの体液に支配され、それによって人格やかかりやすい病気が決まると考えられていた。

ローマ時代になると、マルクス・アウレリウス皇帝の侍医だったクラウディウス・ガレノスが、ヒポクラテスの学説を発掘し、体液説にまとめ上げた。その著書はローマだけでなく、アラブ世界や中世のヨーロッパにも、広く医家の必読書として伝えられた。